車椅子ののイラスト

やみくもに声をかけない

 実際には、まちで見かける車椅子の利用者は、自走できる人か、介助の人が同伴しているケースが多いので、サポートする必要がない場合のほうが多いのです。
 つまり、まちで車椅子の利用者を見かけても、自分自身で自由に動いている様子なら気に留める必要はないですし、むしろ、じろじろと見るのは、避けるべき事柄です。
 声をかけるのは、その人が困っていそうなときだけです。たとえば、交差点のちょっとした段差でてこずっていたり、長いスロープの手前で止まっていたり、重たい引き戸が開けられないでいたりするとき、入口が狭かったり、通路幅が狭かったり、通路にものがおいてあって車椅子が通れないときなどです。車椅子の利用者がどこで困ることが多いのか知っていればサポートもしやすくなります。
 さて、ここでは車椅子の操作の仕方について簡単に述べますが、これはあくまで一般論です。一番のプロは車椅子を利用している人なのですから、本人の指示に従うのが重要です。その人の状態や習慣などにより、サポートの仕方も異なってきます。

車椅子の押し方

 車椅子を押すときは、車椅子のブレーキが外れているかどうか確かめます。ブレーキレバーは大車輪の両側についているので、外れていなければ、本人に外してもらうか、本人に確認をとってから外すとよいでしょう。車椅子の真後ろに立ち、ハンドグリップを両手でしっかり深く握り「押します」と声をかけてからゆっくり押します。このとき押すという意識ではなく、いっしょに歩く感覚でいるとよいと思います。短時間でもハンドグリップを離して車椅子を止めるときは、ブレーキをかけるようにしましょう。きつい傾斜のある通路や坂道には、決して車椅子を止めてはいけません。車椅子が勝手に坂を転がってしまう危険があるからです。
 また、わずかな振動でも苦手な人もいるので、地面をよく見て、なるべく振動がないように車椅子を押す注意が必要です。

段差を超える

車椅子ののイラスト

 段差の上り下りや溝を越えるときはキャスターを上げます。キャスターを上げるときは、突然上げると、驚かせてしまうので「キャスターを上げます」と本人に伝えましょう。また、キャスターを上げるとき、本人が車椅子のシートに深く腰掛けているかを確認します。車椅子で移動中に座る姿勢が前のほうへずれていることがあるからです。とくに、高齢者や車椅子に慣れていない人、上肢にも障害がある人には細心の注意が必要です。
 前向きで段差を越えるときは、足元のステッピングバーをふみこんで、ハンドグリップを両手で下げます(最近、ステッピングバーがない車椅子が増えてきています。ない場合には手首のスナップをきかせてキャスターをもち上げますが、コツが必要です)。キャスターが上がった状態になったら、前の車輪を段に乗せ、後輪を段差に押しつけ、後輪を無理に上げずに押し上げます。後ろ向きで越える場合もあります。また、後ろ向きに段差を下りるときは、後輪を段にそって下ろし、キャスターを上げ、車椅子を後ろにひき、段を越えたらキャスターを下げるといった具合です。これも前向きで越えるケースもあります。どちらがいいかは、段差の程度と本人の習慣によるので、本人の指示に従うのがよいでしょう。溝を越えるときは、「キャスター上げ」の状態で越えるようにします。キャスターを下ろすときはステッピングバーを踏みながら、ゆっくり静かに下ろします。
次の「視覚障害者をどうサポートする?」のページへ進む
このページ先頭へ

Comments

Comments are closed.